創業準備ガイド

売上予測に正解を出すことは難しいですが、客単価、客数、営業日数、席数、回転数、設備能力、商圏データなどを使うと、説明できる数字に近づきます。

このページでは、創業計画書の「事業の見通し」に使えるように、業種別の売上高の計算方法を整理します。

このページでわかること

  • 業種に合う売上計算式を選ぶ考え方
  • 店舗・EC・設備能力など事業形態別の売上予測
  • 商圏データや業界水準を根拠として使う方法
  • 複数シナリオで売上予測を確認する方法

売上予測は希望ではなく根拠で作る

売上予測は、創業計画書の中でも説明が難しくなりやすい項目です。

創業前は実績が少ないため、売上を正確に当てることはできません。それでも、計算式と根拠を使えば、なぜその売上を見込むのかを説明しやすくなります。

根拠に使えるもの
事業の能力席数、設備数、対応可能件数、営業時間
顧客の動き来店客数、予約数、問い合わせ数、フォロワー数
価格客単価、商品単価、月額料金、配送単価
営業日数月の営業日数、繁忙日、定休日
地域データ世帯数、人口、年齢層、消費額、競合状況
過去実績前勤務先の実績、モニター結果、イベント販売実績

売上予測は、ひとつの式だけで決めきらず、複数の根拠で見直すと安全です。

このページの計算式は、創業計画書の正式項目そのものではありません。創業計画書の「事業の見通し」に書く売上高について、客単価、客数、営業日数、商圏データなどの根拠を説明しやすくするための整理方法として使います。

飲食・美容などサービス業の売上計算

飲食業、理容業、美容業、鍼灸整骨院などのサービス業では、席数、設備数、ベッド数、回転数、客単価、営業日数を使って売上を予測できます。

基本式は次の形です。

売上高 = 客単価 × 設備単位数 × 回転数 × 営業日数
項目内容
客単価1人または1件あたりの平均単価
設備単位数席数、施術ベッド数、椅子台数など
回転数1日あたり何回利用されるか
営業日数1か月に営業する日数

たとえば美容室で、客単価が4,000円、椅子が2台、1日1台あたり4回転、月25日営業の場合は、次のように計算できます。

4,000円 × 2台 × 4回転 × 25日 = 800,000円

この式を使うときは、回転数を高く見積もりすぎないことが大切です。開業直後は予約が埋まらない日もあるため、控えめな数字でも事業が成り立つかを確認します。

小売業の売上計算

小売業など、店舗販売の割合が大きい業種では、来店客数、客単価、営業日数を使って売上を予測します。

基本式は次の形です。

売上高 = 1日あたりの来店客数 × 客単価 × 営業日数
項目内容
1日あたりの来店客数1日に購入する顧客数
客単価1人あたりの平均購入額
営業日数1か月に営業する日数

たとえば、1日あたりの来店客数が10人、客単価が7,500円、月26日営業の場合は、次のように計算できます。

10人 × 7,500円 × 26日 = 1,950,000円

来店客数や客単価は、立地、ターゲット、競合、商品価格、営業時間で変わります。「経営戦略」のターゲット整理や競合比較、「マーケティング」の集客計画と合わせて確認します。

ECサイトの売上計算

インターネットを通じて販売する事業では、集客数、CVR、客単価を使って売上を予測できます。

CVRは、サイトに訪れた人のうち、実際に購入や申込をした人の割合です。

基本式は次の形です。

売上高 = 1か月あたりの集客数 × CVR × 客単価
項目内容
集客数サイト訪問数、LP訪問数、広告流入数など
CVR訪問者のうち購入や申込に至る割合
客単価1回あたりの平均購入額

たとえば、1か月あたりの集客数が10,000件、CVRが1%、客単価が4,000円の場合は、次のように計算できます。

10,000件 × 1% × 4,000円 = 400,000円

ECでは、売上だけでなく、広告費、配送費、決済手数料、返品、在庫、梱包費も確認します。集客数を増やすほど費用が増える場合もあるため、「収支計画」の経費とセットで見ます。

運送業など設備能力から計算する方法

運送業など、設備が直接売上に結びつく業種では、単価、設備の生産能力、設備数、営業日数から売上を予測できます。

基本式は次の形です。

売上高 = 単価 × 設備の生産能力 × 設備数 × 営業日数
項目内容
単価1件、1個、1時間などの単価
設備の生産能力1日あたりの配送数、稼働時間、生産数など
設備数車両台数、機械台数、稼働ライン数など
営業日数1か月に稼働する日数

たとえば軽運送業で、配送単価が150円、1日あたり100個配送、車両1台、月25日営業の場合は、次のように計算できます。

150円 × 100個 × 1台 × 25日 = 375,000円

設備能力で計算する場合は、最大能力ではなく、現実的な稼働率で考えます。休業日、移動時間、待機時間、メンテナンス、天候、繁忙期と閑散期も考慮します。

商圏分析を用いる方法

地域商圏型の事業では、商圏内の世帯数や人口、消費額、シェア率を使って売上を予測できます。

たとえば、店舗を中心に半径何kmを商圏とするかを設定し、その地域にどれくらいの顧客候補がいるかを調べます。

基本式の例は次の形です。

売上高 = 世帯数 × 1世帯あたり消費額 × シェア率

また、高齢者向けサービスなどでは、対象となる人数、平均単価、シェア率を使って考えることもできます。

売上高 = 対象者数 × 平均単価 × シェア率
項目内容
商圏店舗や営業対象地域から見た顧客を取り込める範囲
世帯数・人口商圏内の顧客候補数
消費額・平均単価1世帯または1人あたりの利用額
シェア率商圏内で自社が獲得できると見込む割合
競合状況同じ顧客を狙う店舗やサービスの数、強さ

商圏を決めるときは、地図上の半径だけで判断しないことが大切です。大きな道路、河川、駅、駐車場、生活動線、人通り、競合店の位置も売上に影響します。

e-StatとRESASで地域データを調べる

商圏分析では、公的な統計データを活用できます。

e-Statは、日本の統計を閲覧できる政府統計ポータルサイトです。RESASは、地域経済分析システムで、人口や企業活動、消費活動などの地域データを視覚的に確認できます。

サイト使いどころ
e-Stat人口、世帯、商業統計、家計調査などの統計データを確認する
RESAS地域の人口、産業、消費、企業活動などを地図やグラフで見る

公的データは、売上予測の根拠を補強する材料になります。ただし、統計データだけで売上は決まりません。実際の立地、競合、商品力、価格、集客力と合わせて判断します。

小企業の経営指標調査で業界水準を確認する

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」では、業種ごとの収益性や生産性などの指標を確認できます。

売上予測を作るときは、自分の数字が業界水準と比べて大きく外れていないかを見ることも大切です。特に、原価率や経費の水準を確認すると、「収支計画」の見直しに役立ちます。

確認すること見方
売上高の水準同業種の規模感と比べて無理がないか
原価率売上原価が高すぎないか、低すぎないか
人件費や経費経費の見積もりが現実的か
利益率利益が残る構造になっているか

業界平均はあくまで参考です。自社の立地、価格帯、ターゲット、販売方法が違えば、数字も変わります。

予測値は複数の根拠で確認する

売上予測は、ひとつの根拠だけで決めると危険です。

たとえば、飲食店なら席数と回転数で計算した売上を、商圏人口、人通り、競合、SNS反応、前勤務先の実績などと照らし合わせます。ECなら、広告流入だけでなく、SNSの反応、検索需要、過去の販売実績、CVRの妥当性も確認します。

確認方法役割
計算式売上の構造を整理する
市場調査顧客候補や競合状況を確認する
過去実績実際に近い数字を参考にする
モニター・予約創業前の反応を確認する
業界指標原価率や経費水準を確認する
低めのシナリオ想定より売れない場合の資金繰りを見る

売上予測は、強気、標準、控えめの3パターンを作ると、資金計画や収支計画の安全性を確認しやすくなります。

創業計画書に転記できる形にする

売上高の計算根拠は、創業計画書の「事業の見通し」に使います。

単に「月商100万円を見込みます」と書くよりも、客単価、客数、営業日数などの根拠を示すと、読み手が計画を理解しやすくなります。

売上計算で整理する内容創業計画書につながる項目
月間売上高事業の見通し
客単価売上高の根拠
客数・件数売上高の根拠
営業日数売上高の根拠
設備数・回転数売上高の根拠
商圏データ売上高の根拠、販売戦略
業界指標原価率、経費、利益の妥当性

創業計画書に書くときは、計算式と、その数字を置いた理由を短く説明できるようにします。

よくあるつまずき

売上予測でよくあるつまずきは、満席、満枠、最大稼働を前提にしてしまうことです。

創業当初は、認知が少なく、予約や来店が安定しないことがあります。最大能力ではなく、創業当初に現実的な稼働率で計算し、「収支計画」で返済後の手元資金を確認します。

もう1つのつまずきは、客単価だけを見て、客数や営業日数を確認しないことです。高単価でも客数が少なければ売上は伸びません。低単価でも回転数や継続率が高ければ成り立つ場合があります。

次は事業形態を検討する

売上と収支の見通しが見えてきたら、次は事業形態を検討します。

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