創業前にターゲットを絞るのが怖いと感じるのは自然です。「顧客を絞ると売上が減るのではないか」と不安になる人は少なくありません。
しかし、創業時に全員へ向けて売ろうとすると、商品、価格、発信、接客の言葉がぼやけます。この記事では、ターゲットを絞る意味を「お客さんを切り捨てること」ではなく、「最初に選ばれる相手を明確にすること」として整理します。
このページでわかること
- ターゲットを絞ると売上が減るという不安の正体
- 属性だけでなく悩みや利用場面で考える方法
- 万人向けが伝わりにくくなる理由
- 最初に選ばれたいお客さんを決める手順
ターゲットを絞るのはお客さんを拒むことではない
ターゲットを絞ると聞くと、「それ以外のお客さんを断る」という印象を持つかもしれません。
しかし、創業計画でターゲットを決める目的は、お客さんを拒むことではありません。最初に誰へ向けて商品、発信、価格、接客を設計するかを決めることです。
「誰でも歓迎」と「誰に最初に選ばれたいか」は別です。
店としては幅広い人を受け入れてもよいかもしれません。ただし、発信や商品づくりの段階では、最初に届けたい相手を決めないと、言葉が弱くなります。
たとえば、「地域の皆さんへ」よりも「平日の夕食準備に時間が取れない共働き世帯へ」のほうが、商品、価格、営業時間、SNS投稿、チラシの言葉が具体的になります。
万人向けは誰にも刺さりにくい
創業時に「幅広い人に売りたい」と考えるのは自然です。売上を増やしたいからです。
しかし、万人向けにすると、結果として誰にも強く伝わらないことがあります。
| 万人向けの表現 | 伝わりにくい理由 |
|---|---|
| どなたでもお気軽に | 誰のどんな悩みに合うのか見えない |
| 幅広い年齢層に対応 | 具体的な利用場面が浮かばない |
| さまざまなニーズに対応 | 何が得意なのか伝わりにくい |
| 地域の皆さまへ | 自分に関係ある情報か判断しにくい |
| 高品質で低価格 | 競合も言えるため違いが見えない |
お客さんは、自分に関係があると感じたときに読み進めます。
誰にでも当てはまる言葉は、一見やさしく見えますが、選ぶ理由としては弱くなります。創業時は知名度が少ないからこそ、「これは自分向けだ」と思ってもらえる言葉が必要です。
属性だけではターゲットは決まらない
ターゲット設定でよくあるつまずきは、年齢や性別だけで決めてしまうことです。
「30代女性」「シニア層」「子育て世帯」だけでは、まだ広すぎます。同じ30代女性でも、悩み、生活リズム、購買理由、価格感、情報収集の方法は違います。
ターゲットは、属性に加えて、悩み、利用場面、購買理由をセットで考えます。
| 観点 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 属性 | 年齢、職業、家族構成、地域 | 30代共働き世帯 |
| 悩み | 困っていること、不安、不満 | 平日の夕食準備に時間がない |
| 利用場面 | いつ、どこで、どんな状況で使うか | 仕事帰りに駅前で受け取る |
| 購買理由 | なぜ買うのか、何と比べるのか | 自炊より楽で、外食より安心 |
| 不安 | 買う前に迷うこと | 価格、量、子どもが食べるか |
このように整理すると、商品や発信が具体的になります。
ターゲットは、人物像を細かく飾ることが目的ではありません。商品、価格、販売方法、発信を決めるための判断材料として使います。
最初に選ばれたい人を決める
創業時に大切なのは、最初に選ばれたい人を決めることです。
最初に選ばれたい人が決まると、事業全体の判断がしやすくなります。
| 決めること | ターゲットが決まると見えること |
|---|---|
| 商品・サービス | 何を用意し、何をあえてやらないか |
| 価格 | 高くても納得される価値か、手に取りやすさを優先するか |
| 発信 | どんな悩みや言葉で伝えるか |
| 販売場所 | 店舗、Web、SNS、チラシ、紹介のどれを使うか |
| 接客 | どんな説明やフォローが必要か |
たとえば、同じ整体でも、ターゲットによって事業の見せ方は変わります。
| ターゲット | 打ち出し方の例 |
|---|---|
| デスクワークで肩こりに悩む人 | 仕事帰りに通いやすい予約枠、姿勢アドバイス |
| 産後の体調に不安がある人 | 子連れ対応、女性スタッフ、説明の丁寧さ |
| スポーツを続けたい人 | パフォーマンス維持、セルフケア指導 |
同じ技術でも、誰に向けるかで、価格、予約時間、ホームページ、SNS投稿、店内の雰囲気が変わります。
絞ると集客方法も決めやすくなる
ターゲットを絞ると、集客方法も決めやすくなります。
なぜなら、お客さんがどこで情報を見て、何を不安に思い、どんな言葉に反応するかを考えやすくなるからです。
| ターゲット | 届きやすい接点 | 発信内容の例 |
|---|---|---|
| 近隣の子育て世帯 | チラシ、地域SNS、紹介 | 子ども連れ対応、利用の流れ |
| 仕事帰りの会社員 | Google検索、地図、SNS | 営業時間、予約のしやすさ |
| 法人担当者 | ホームページ、紹介、営業資料 | 実績、費用対効果、導入手順 |
| 趣味を深めたい人 | SNS、コミュニティ、イベント | 作品例、体験会、参加者の声 |
ターゲットが曖昧なままだと、「Instagramもチラシも広告も全部やる」となりがちです。結果として、時間もお金も分散します。
創業期は使える資源が限られます。だからこそ、最初に選ばれたい人へ届く方法を優先します。
ターゲットは仮決めして検証する
ターゲットは、一度決めたら永遠に変えられないものではありません。
創業前は、仮で決めて検証します。見込み客に話を聞く、SNSで発信する、モニターを募集する、体験会を開くなど、小さく反応を見ます。
| 仮説 | 検証方法 |
|---|---|
| この悩みを持つ人が反応する | 見込み客3人に話を聞く |
| この価格なら申し込む | モニター価格ではなく通常価格に近い金額で聞く |
| SNSで届く | 10投稿して保存数や問い合わせを見る |
| 体験会に来る | 少人数の体験会を告知する |
| 法人向けに需要がある | 知人企業に課題を聞く |
反応がなければ、ターゲットを変えるのではなく、悩みの捉え方、価格、説明、導線を先に見直します。
「狙った人が反応しなかった」という結果も、創業前なら貴重な情報です。マーケティング やテスト販売の結果と合わせて、ターゲットを磨いていきます。
創業計画書では広げすぎず具体化する
創業計画書にターゲットを書くときは、広げすぎないことが大切です。
「地域の幅広いお客さん」よりも、「近隣で平日夕方に利用しやすいサービスを探している共働き世帯」のように、利用場面まで入れると伝わりやすくなります。
| 書き方 | 伝わりやすさ |
|---|---|
| 幅広い年代の方 | 誰向けか曖昧 |
| 30代から50代女性 | 属性はあるが悩みが見えない |
| 仕事帰りに短時間で利用したい30代から50代の女性 | 利用場面が見える |
| 子ども連れでも安心して通える近隣の子育て世帯 | 不安と選ぶ理由が見える |
創業計画書では、ターゲットを絞った理由も説明できると強くなります。
「見込み客へのヒアリングで、初回利用時の不安が多かった」「競合ではこの層への情報が少なかった」など、調査や観察を根拠にします。
まず1人のお客さん像を書いてみる
今日やることは、完璧なペルソナを作ることではありません。
まず、最初に選ばれたいお客さんを1人だけ思い浮かべて、次の項目を書いてください。
| 項目 | メモ |
|---|---|
| どんな人か | |
| 何に困っているか | |
| 今はどう解決しているか | |
| 何が不安で買わないか | |
| どこで情報を探すか | |
| 自社を選ぶ理由は何か |
書いたら、その人に近い人へ話を聞きます。机の上で決めたターゲットは、実際の声で修正していくものです。
ターゲットを絞ることは、お客さんを減らすことではありません。最初に誰へ届けるかを決め、選ばれる理由を鋭くすることです。
ターゲットと競合を合わせて整理したい人は 経営戦略、その人にどう届けるかを考えたい人は マーケティング へ進んでください。