店舗や事務所の家賃、人件費、リース料などの固定費は、売上が少ない月でも出ていきます。創業前に固定費を高くしすぎると、開業後の資金繰りが一気に苦しくなることがあります。
物件や設備を決める前に、その固定費をまかなうために毎月いくら売る必要があるかを確認します。この記事では、家賃や固定費を決める前に採算ラインを見て、無理のない開業規模を考える方法を整理します。
このページでわかること
- 固定費が創業後の利益を圧迫する理由
- 家賃を決める前に見るべき数字
- 損益分岐点から必要売上を確認する方法
- 小さく始める選択肢の考え方
固定費は売上が少なくても出ていく
固定費は、売上が多い月でも少ない月でも、ほぼ一定で出ていく費用です。
代表的なものは、家賃、人件費、リース料、保険料、通信費、システム利用料などです。
| 固定費 | 内容例 |
|---|---|
| 家賃 | 店舗、事務所、倉庫、駐車場 |
| 人件費 | 正社員給与、固定シフトの人件費 |
| リース料 | 厨房機器、美容機器、車両、POS |
| 通信・システム | インターネット、予約システム、会計ソフト |
| 保険・会費 | 火災保険、賠償責任保険、業界団体会費 |
固定費は、売上が立ち上がる前から発生します。
創業当初は、認知が少なく、売上が安定しないことがあります。それでも家賃やリース料は待ってくれません。
だからこそ、固定費を決める前に採算ラインを確認します。
家賃は場所の魅力だけで決めない
良い立地の物件を見つけると、早く契約したくなります。
もちろん、立地は売上に影響します。しかし、家賃が高すぎると、毎月の利益を大きく圧迫します。
物件を検討するときは、家賃だけでなく、家賃を払うために必要な売上を確認します。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 家賃総額 | 賃料、共益費、駐車場、看板料など |
| 初期費用 | 保証金、礼金、仲介手数料、前家賃 |
| 契約期間 | 解約条件、更新料、違約金 |
| 売上への影響 | その立地でどれだけ客数が増えるか |
| 許認可 | その物件で営業できるか |
| 改装費 | 追加工事が必要か |
「良い場所だから大丈夫」と思っても、採算が合わなければ事業は苦しくなります。
物件契約前に、家賃を含めた固定費で損益分岐点を計算します。
固定費から必要売上を逆算する
固定費を決める前に、必要売上を逆算します。
簡単に考えるなら、まず毎月の固定費を合計します。
| 固定費 | 月額 |
|---|---|
| 家賃 | |
| 人件費 | |
| リース料 | |
| 通信費 | |
| 広告費 | |
| 保険料 | |
| その他 | |
| 合計 |
次に、商品やサービスを1件売ったときにいくら残るかを見ます。
1件あたり残る金額 = 価格 - 変動費
固定費を1件あたり残る金額で割ると、必要な販売数が見えます。
必要販売数 = 固定費 ÷ 1件あたり残る金額
たとえば固定費が60万円で、1件あたり3,000円残るなら、月200件が必要です。月25日営業なら、1日8件です。
この1日8件が現実的かどうかを、商圏、営業時間、設備能力、集客方法と照らし合わせます。
固定費が高いと選択肢が減る
固定費が高いと、売上が少ない月に耐えにくくなります。
また、経営判断の自由度も下がります。
| 固定費が高いと起きること | 影響 |
|---|---|
| 売上が少ない月に赤字が大きい | 手元資金が早く減る |
| 値下げやキャンペーンに頼りやすい | 利益がさらに薄くなる |
| 広告費をかけにくい | 集客の改善が遅れる |
| 商品改善にお金を回せない | 品質や体験の向上が難しい |
| 休みにくい | 体調や家庭への負担が増える |
創業時は、計画どおりに売上が立たないこともあります。
固定費を軽くしておくと、改善する時間を確保しやすくなります。逆に固定費が重いと、開業直後から焦りが強くなります。
小さく始める選択肢も検討する
理想の店舗や設備を最初からそろえたくなる気持ちは自然です。
しかし、初期投資や固定費が大きくなりすぎる場合は、小さく始める選択肢も検討します。
| 小さく始める方法 | 向いている場面 |
|---|---|
| 間借り | 飲食、教室、相談、イベント販売 |
| シェアキッチン | 食品系の試作・販売 |
| レンタルスペース | 教室、セミナー、体験会 |
| 自宅・オンライン | 相談業、制作業、講座 |
| 出張・訪問 | サービス業、メンテナンス、支援業 |
| イベント出店 | 物販、飲食、ハンドメイド |
小さく始めることは、妥協ではありません。
需要を確認し、顧客の声を集め、資金を守りながら事業を育てる方法です。
ただし、自宅、間借り、シェアキッチン、出張などでも、業種によって許認可や契約条件が関係する場合があります。実行前には必ず確認します。
物件契約前に収支計画へ入れる
物件や固定費を決める前に、収支計画に入れてみます。
「良さそうな物件だから」ではなく、「この家賃を払っても利益が残るか」を見ます。
| 収支計画で確認すること | 内容 |
|---|---|
| 売上 | 客単価、客数、営業日数 |
| 原価 | 仕入れ、材料費、手数料 |
| 固定費 | 家賃、人件費、リース料など |
| 利益 | 売上から原価と経費を引いた金額 |
| 返済・生活費 | 利益からさらに差し引くもの |
| 手元資金 | 最終的に残るお金 |
控えめな売上でも資金が残るかを確認します。
標準シナリオでは黒字でも、売上が7割や5割になったときに資金が尽きるなら、固定費が重すぎる可能性があります。
まず家賃を払うために必要な客数を出す
今日やることは、すべての固定費を精密に計算することではありません。
まず、候補物件の家賃を使って、必要な客数をざっくり出してください。
家賃をまかなう客数 = 家賃 ÷ 1件あたり残る金額
たとえば家賃20万円で、1件あたり2,000円残るなら、家賃だけで月100件が必要です。
200,000円 ÷ 2,000円 = 100件
そこに人件費、仕入れ、広告費、返済、生活費も加わります。
物件は、事業の魅力を高める一方で、固定費にもなります。契約前に採算ラインを確認し、無理のない開業規模を選びましょう。