創業準備ガイド

消費税とインボイスは、創業前に「登録する・しない」を決めておくと、価格設定、請求書の様式、会計ソフトの初期設定まで一度に整えられます。逆に開業後に慌てて登録すると、取引先への値決めや納税資金の準備が後手に回りがちです。

このページでは、消費税の基本、創業から2年ほど続く免税、インボイス登録の損得、2026年で終わる2割特例と個人事業主向けに新設された3割特例、本則課税と簡易課税の違いを整理します。税額の計算や登録の可否は、売上規模、事業形態、取引先、制度改正によって変わるため、実際の判断は税理士、税務署、会計ソフトの設定でも確認します。

このページでわかること

  • 消費税の免税事業者と課税事業者の違い
  • 創業から2年ほど免税になれる原則と、インボイス登録で変わること
  • 登録するか、免税のままかを取引先から判断する考え方
  • 2026年で終わる2割特例と、個人事業主向けに新設された3割特例
  • 本則課税と簡易課税の違い、登録手続きの時期

消費税は「預かって納めるお金」だと理解する

消費税は、事業者が売上と一緒にお客さまから預かり、仕入れや経費で支払った分を差し引いて、国に納める税金です。自分のもうけ(利益)ではありません。

インボイス制度は、この消費税を正しく計算するための請求書のルールです。買い手が支払った消費税を差し引く(仕入税額控除する)には、売り手が発行した「適格請求書(インボイス)」が必要です。そのため、売り手がインボイスを発行できる事業者かどうかが、取引で問われるようになりました。

用語内容
課税事業者消費税を申告して納める事業者
免税事業者消費税の納付が免除される事業者
適格請求書(インボイス)登録番号、税率、税額を記載した請求書
適格請求書発行事業者インボイスを発行できる登録事業者。必ず課税事業者になる
仕入税額控除支払った消費税を、預かった消費税から差し引くこと

創業から2年は消費税の免税事業者になれるのが原則

新しく開業した個人事業主や新設した法人は、消費税の判定のもとになる「基準期間(2年前)」の売上がまだないため、原則として開業からしばらく(多くは2年ほど)は免税事業者になれます。

事業形態免税になりやすい条件注意点
個人事業主基準期間の課税売上高が1,000万円以下開業1年目・2年目は基準期間がないため原則免税
法人基準期間がなく、資本金1,000万円未満資本金1,000万円以上は設立初年度から課税事業者
共通特定期間(前年上半期など)の課税売上高や給与が1,000万円を超えると課税事業者になる

ただし、この免税はあくまで「インボイスに登録しなければ」の話です。登録すると扱いが変わります。

インボイスに登録すると、その免税をやめて課税事業者になる

適格請求書発行事業者に登録すると、売上規模に関わらず課税事業者になります。つまり、創業から2年ほど続く免税というメリットを、自分から手放すことになります。ここがインボイスで最初に迷うところです。

選ぶ道メリットデメリット
免税のままでいる消費税を納めなくてよい。事務負担が軽い取引先がインボイスをもらえず、選ばれにくくなる場合がある
登録して課税事業者になる取引先が仕入税額控除でき、取引を続けやすい消費税の申告・納付が必要になり、事務負担が増える

登録するかは「取引先が誰か」で判断する

登録すべきかどうかは、あなたの主な取引先がインボイスを必要とするかどうかで大きく変わります。

主な取引先インボイスの必要性登録の考え方
事業者が中心(BtoB、卸・下請け・法人相手)相手が仕入税額控除に使う登録を前向きに検討する
一般消費者が中心(BtoC、飲食・美容・小売の個人客)基本的に不要免税のままも選択肢になる
免税事業者や簡易課税の相手が中心求められにくい免税のままも選択肢になる

消費者向けの事業でも、法人客の経費精算や領収書でインボイスを求められる場面はあります。取引先の顔ぶれを一度書き出してから判断すると、迷いが減ります。

2割特例は2026年で終わり、個人は3割特例に移る

登録して課税事業者になった人の負担を抑える経過措置は、2026年で区切りを迎えます。2割特例は終了し、個人事業主に限って新たに3割特例が設けられました。これが令和8年度税制改正の大きな変更点です。

特例対象対象期間納める消費税
2割特例登録により課税事業者になった個人・法人令和5年10月〜令和8年(個人は令和8年分=2026年分の申告まで)売上にかかる消費税の2割
3割特例(新設)個人事業主のみ(法人は対象外)令和9年分・令和10年分(2027年・2028年)売上にかかる消費税の3割

3割特例は、個人事業主で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下、かつインボイス登録によって免税事業者でなくなった人が対象です。適用には確定申告書への付記が必要とされています。

あわせて、免税事業者などから仕入れた場合に一部を控除できる経過措置も見直され、令和8年10月以降は控除できる割合が80%から70%に下がり、その後も段階的に縮小される予定です。

これらは令和8年度税制改正時点で確認できる内容です。金額、期間、割合は今後の改正で変わるため、申告の前に国税庁の最新情報や税理士で必ず確認します。

本則課税と簡易課税で納税額の計算が変わる

課税事業者になった場合、消費税の計算方法には本則課税と簡易課税があり、事務負担と納税額が変わります。

計算方法仕組み向いている場合主な条件
本則課税(原則)預かった消費税から、実際に払った消費税を差し引く設備投資や仕入れが多い帳簿とインボイスの保存が必要
簡易課税預かった消費税に、業種ごとのみなし仕入率をかける仕入れが少なく、事務を簡単にしたい基準期間の課税売上高5,000万円以下で、事前に届出
2割・3割特例売上にかかる消費税に、2割または3割をかける登録で課税事業者になった小規模事業者対象者・期間の要件がある

簡易課税は本来、適用したい年の前までに届出が必要です。ただし、2割・3割特例を使った後は、翌年分の申告期限までに届出すればよいと緩和されました。

登録の手続きと申請のタイミングを確認する

インボイス発行事業者になるには、税務署への登録申請が必要です。登録番号が通知されるまでに時間がかかるため、開業日や取引開始から逆算して申請します。

確認することメモ
課税事業者になるか免税のメリットを手放す判断をする
計算方法本則課税か簡易課税かを決める
申請の時期開業日や取引開始から逆算する
請求書の様式登録番号、税率、税額を記載できるようにする
会計ソフトインボイス対応と消費税区分の設定を確認する

申請は納税地の所轄税務署に、e-Taxまたは郵送で行います。登録の取りやめ(免税に戻る)にも期限と手続きがあるため、迷う場合は登録前に相談します。

収支計画では消費税を利益と混同しない

課税事業者になると、預かった消費税は自分のもうけではなく、後で納めるお金です。収支計画や資金繰りでは、消費税を利益と分けて考えます。

見る場面消費税の見方
収支計画税抜で利益を見て、消費税は別に管理する
資金繰り納税月に、納付する資金を確保しておく
設備投資が多い年本則課税なら、払った消費税が多く還付になる場合がある

免税事業者のうちは受け取った消費税相当が手元に残りますが、経過措置の縮小により、その前提は年々弱くなっています。課税事業者になったら、納税用のお金を別に取り分ける習慣が、資金繰りを守ります。設備費の扱いは 減価償却、利益と手元資金の全体像は 収支計画 で確認します。

よくあるつまずき

インボイスと消費税でよくあるつまずきは、免税のメリットだけを見て登録し、納税資金を準備していないことです。課税事業者になった年から、消費税は必ず出ていくお金になります。

反対に、取引先が消費者中心で必要ないのに登録し、事務負担だけを増やしてしまう例もあります。登録は「取引先が求めるか」から考えます。

もう1つは、2割特例が続く前提で資金計画を立ててしまうことです。2割特例は2026年で終わり、個人事業主は3割特例へ移ります。制度の金額基準や期間を自己判断せず、申告前には必ず最新の公式情報と税理士で確認します。

次は収支計画で税抜の利益と手元資金を確認する

消費税の扱いを決めたら、次は収支計画に進みます。

収支計画では、売上、原価、経費、利益を税抜で整理し、借入返済や生活費、そして消費税の納税まで含めて、手元にお金が残るかを見ます。

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