創業準備ガイド

初めて人を雇う創業者にとって、労務の法律名は難しく見えます。しかし大切なのは、法律を暗記することではなく、「どの場面で何を確認すべきか」を知ることです。

このページでは、個人事業主や小規模な創業者が雇用前に知っておきたい主な法律を、目的と注意点に分けて整理します。実際の判断は雇用形態、業種、従業員数、勤務実態で変わるため、労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所、社会保険労務士などに確認してください。

このページでわかること

  • 雇用主が知っておきたい主な法律
  • それぞれの法律が何を守るためのものか
  • パート・アルバイトを雇うときの注意点
  • 困ったときに相談する窓口

雇用の法律は丸暗記ではなく目的で見る

雇用に関する法律は多岐にわたります。

創業者が最初に見るべきなのは、法律名の暗記ではなく、目的の違いです。労働時間や給与の最低ライン、契約上のトラブル、パートの待遇差、安全と健康、仕事中のけが、失業時の給付など、場面ごとに確認する法律が変わります。

法律名法律のざっくりした目的小規模事業者が注意したい点
労働基準法労働時間、休憩、休日、賃金などの最低基準を定めるパートでも労働条件を書面で明示し、勤務時間に応じて有給も管理する
最低賃金法労働者に支払う賃金の最低額を定める都道府県ごとの最低賃金を確認し、試用期間でも下回らないようにする
労働契約法労働者と雇用主の契約上のトラブルを防ぐ口約束にせず、契約期間や更新条件を明確にする
パートタイム・有期雇用労働法パートや有期契約労働者の不合理な待遇差を防ぐ同じ仕事を任せる場合、手当や待遇差の説明が必要になることがある
労働安全衛生法働く人の安全と健康を守る業種や規模に応じて健康診断や安全配慮を確認する
労働者災害補償保険法仕事中や通勤中のけがなどを補償する1人でも労働者を雇ったら労災保険を確認する
雇用保険法失業、育児休業、介護休業などに関する給付を定める週20時間以上、31日以上の雇用見込みなどを確認する

労務・雇用ルールの専門家は社会保険労務士です。迷う場合は、早めに相談します。

労働基準法は労働条件の最低ラインを定める

労働基準法は、労働条件の基本となる法律です。

労働時間、休憩、休日、賃金、有給休暇、解雇など、雇用主が守るべき最低ラインに関係します。小規模な店舗や個人事業であっても、労働者を雇うなら確認が必要です。

関係する場面
採用時労働条件を明示する
シフト作成労働時間、休憩、休日を確認する
給与計算時間外、休日、深夜の割増賃金を確認する
有給管理勤続期間、出勤率、取得日数を記録する

労働時間、給与、休憩、有給の入口は、雇用ルール で確認できます。

最低賃金法は時給の下限を定める

最低賃金法は、労働者に支払う賃金の最低額を定める法律です。

最低賃金は都道府県ごとに定められます。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が関係する場合は、高い方を確認します。三重県で事業を始める場合は、三重県の最低賃金を最新情報で確認します。

注意すること内容
毎年の改定最低賃金は改定されるため、古い金額を使わない
試用期間試用期間だからといって当然に下回れるわけではない
手当の扱い最低賃金の比較に含めない賃金がある
求人票掲載時点の最低賃金を下回らないようにする

時給を決めるときは、最低賃金だけでなく、人件費として採算が合うかも確認します。

労働契約法は契約上のトラブルを防ぐ

労働契約法は、労働者と使用者の契約関係に関する基本的なルールです。

創業直後は、知人や紹介で採用することもあります。しかし、近い関係だからといって口約束で始めると、仕事内容、契約期間、更新、退職、給与で認識がずれることがあります。

曖昧にしないことなぜ必要か
契約期間有期契約か、期間の定めがない雇用かを分ける
更新の有無更新する可能性、判断基準を伝える
業務内容「何でもやる」ではなく担当範囲を決める
退職・解雇トラブルになりやすいため事前に確認する

雇用契約は、信頼していないから作るものではありません。信頼関係を壊さないために、条件を見える形にします。

パートタイム・有期雇用労働法は不合理な待遇差を防ぐ

パートタイム・有期雇用労働法は、パートや有期契約労働者が、通常の労働者と比べて不合理な待遇差を受けないようにするための法律です。

小規模事業者でも、同じ仕事、同じ責任を任せているのに、パートだからという理由だけで手当や待遇を大きく変えると問題になることがあります。

確認すること
仕事内容正社員と同じ仕事をしているか
責任の範囲クレーム対応、締め作業、管理業務を任せているか
手当通勤手当、役職手当、賞与などの扱い
説明待遇差について説明できるか

創業時は正社員を置かず、パート中心で始めることもあります。その場合でも、役割と待遇の理由を説明できるようにします。

労働安全衛生法は安全と健康を守る

労働安全衛生法は、職場で働く人の安全と健康を守るための法律です。

大きな工場だけでなく、小さな店舗や事務所でも、事故や健康障害の防止は雇用主の責任に関係します。飲食店、美容、建設、製造、介護、配送など、けがや体調不良が起きやすい業種では特に確認します。

職場で確認すること
安全滑りやすい床、刃物、火気、重い荷物、機械
健康長時間労働、休憩、暑さ寒さ、感染症対策
教育初日に危険箇所や作業手順を説明する
健康診断常時使用する労働者など、対象者を確認する

安全衛生は、事故が起きてから考えるものではありません。採用前から、働く場所を点検します。

労災保険法と雇用保険法はもしもの給付につながる

労災保険法と雇用保険法は、労働者にもしものことがあったときの給付に関係します。

労災保険は、仕事中や通勤途中のけがなどに関係します。雇用保険は、失業、育児休業、介護休業、教育訓練などに関係します。加入手続が漏れていると、働く人が必要な給付を受けにくくなるおそれがあります。

法律・制度確認する場面
労災保険法1人でも労働者を雇ったとき
雇用保険法週20時間以上、31日以上の雇用見込みがあるとき
労働保険の成立手続労災保険と雇用保険を事業所として確認するとき

3つの保険の違いは、3つの保険 で整理しています。

迷ったら労働基準監督署・ハローワーク・社労士に確認する

雇用のルールは、自分だけで判断しない方が安全です。

相談先は、確認したい内容によって変わります。労働条件や労災は労働基準監督署、雇用保険はハローワーク、社会保険は年金事務所、全体の実務設計は社会保険労務士が主な相談先です。

相談したいこと主な相談先
労働時間、休憩、休日、賃金労働基準監督署、社会保険労務士
労災保険、労働保険労働基準監督署、都道府県労働局
雇用保険ハローワーク
健康保険・厚生年金保険年金事務所、協会けんぽ
雇用契約や労務管理全体社会保険労務士

相談前には、勤務時間、給与、雇用期間、仕事内容を書いたメモを用意しておくと話が早くなります。

まず自分の雇用予定に関係する法律に印をつける

今日やることは、自分の雇用予定に関係する法律へ印をつけることです。

自分に関係しそうか法律・制度確認する理由
労働基準法労働時間、休憩、給与、有給の基本
最低賃金法時給が最低賃金を下回らないか
労働契約法口約束ではなく契約条件を明確にするため
パートタイム・有期雇用労働法パートや有期契約の待遇差を確認するため
労働安全衛生法職場の安全と健康を守るため
労災保険法仕事中や通勤中のけがに備えるため
雇用保険法対象者の加入手続を確認するため

すべてを完璧に理解してから採用する必要はありません。まずは自分の雇用予定に関係する項目を把握し、相談先へ確認できる状態にします。

次は届出と手続きを確認する

法律の全体像を見たら、次は実際の届出と手続きを確認します。

給与を支払う場合、従業員を雇う場合、法人化する場合で、税務署、年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署への手続きが変わります。

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